個人商店化が進んだチームに対する改善

マネジメント
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「うちの課はベテランが揃ってるから」

そんな話をしてくれた課長のAさんに異動の話が出ました。

そのあとはベテランのうちの一人、Bさんが課長ポジションを引き継ぐことになるそうですが、昇格時期まで少し間があり、そこで引き継ぎや課長職として必要なことを学ばせるので、スポット的にサポートに入って欲しいと部長さんから頼まれた時のお話です。

抱えていた問題

たしかにA課長の言うように、その課は10~15年も専任で担当してきた設計者がゴロゴロといる組織でした。

課員の50%が40代のベテランで、25%が油の乗りつつある30歳手前、残りの25%でリーマンショック時代で採用が見送られた30代と20代中盤が占めています。

そして、A課長もその道25年のプレーヤーであり、とても優秀な方

そんなA課長は、その専門性を買われて海外拠点への異動が決まりました。

部長さん
部長さん

所長、A課長が異動してBさんが課長になるまでの間、スポット的にサポートしてくれないかな?

所長
所長

でも、そこってベテラン揃いでそれぞれが自分で仕事を回せるような課じゃなかったでした?
私みたいなそこの製品知識がない者がサポートに入る意味がよく分からないですが?

部長さん
部長さん

いや、それが実はその課の状況がすごく悪いから、なんとか改善をしてほしくてね。
それで、管理面でのサポートをお願いしたいと思っているんだ。

何が?と、聞かれると困るんだけど、そもそも報告がなくて実情の把握もできないんだ。課長からの報告会にも忙しいからと出てこないし、月報の類も出てこない。

上手くいっていないことは他部署関係者からの声もあるから確実なんだけど、原因も全く分からない状況で困っているんだよ。

担当者のスキルが高いから、それぞれの担当者が一人で受け持ちの業務を推進している。

担当者たちからA課長への報告もほとんどなく、A課長もそれで良しとしている状況。

なぜなら、A課長はフォローするときだけ各担当に話を聞けば、あとは自分で処理ができてしまうほど優秀なプレーヤーであることも影響して、管理は一切なく個人の裁量と技術だけで乗り切るスタイルの課でした。

そして、A課長がそういったスタイルを取っている一番の理由は”管理より実務が好き”

でも、こういう課長さんの方が多い気がします。

改善する組織に入り込む

さて、レンタル移籍して1ヶ月は様子見期間としました。

まだA課長もいらっしゃいますし、私自身その課の扱う製品を知りませんから、勉強からです。

そして、担当者たちとの立ち位置の確認や、その課の受け持つ仕事の内容、それぞれの人柄なんかも含めて確認しておくことも重要ですが、反対に自分のことも知ってもらって、お互いの間の警戒をほぐすことが一番の目的です。

人間だれしも自分のテリトリーを侵されることには強い抵抗が出ます。

いくら”あなたたちのため”だと改善を進めても、警戒が強い間は上手くいかないものです。

まずは、仲間だという認めてもらうことが必要です。

そして仲間だと認めてもらうために重要なのは、

  • スポットだからという姿勢や嫌がるような姿勢ではなく、意欲的に働く
  • ベテランはもちろん、新人でも自分より専門的な知識のある部分に対して素直に尊敬する
  • 絶対に成功させるという強い意志を持つ
  • よく話し、よく笑い、コミュニケーションをしっかりとる
  • そして、自分がそのチームの一員であることを強く意識する

問題抽出へのアプローチ

お互いの間の警戒が薄まってきたころから、徐々に問題の原因を探り、改善の糸口を見付けるように活動を始めます。

今回は、それぞれのメンバーと面談をしながら、困りごとや組織の問題として感じていることなどをざっくばらんに聞くとともに、それぞれのキャリアプランなども聞きながら、組織をどう作り上げていくかの構想の素を集めるところから始めました。

チームの一員であり、絶対に成功させてやるという強い意識で取り組みはしますが、最終的には自分はこの組織から抜けることになります

その時に自分が抜けた状態でも崩れない環境に整える必要があります

ですから、それぞれのキャリアプランは都度確認しながら石垣を組み上げるように、少しずつ土台を固めていく意識で組織を作りながら、マネジメントができる体制を仕上げるイメージが大切です。

見付けた問題

チームメンバーから吸い上げた困りごとや問題意識をまとめたキーワードは『忙しい』でした。

担当者たちが忙しい
  ↓
課長は仕事を担当者たちに割り振れない(あふれた仕事がある)
  ↓
課長も実務をすることになり忙しくなってくる
  ↓
部長への報告などの業務を後回しにし、目の前の実務を処理することを優先
  ↓
部長に報告が上がらず、忙しく回らないことが把握できず手が打てていない
  ↓
担当者たちは仕事の仕方や相談をしたいが、課長も忙しくなかなか席にもいない
  ↓
自分たちでがんばってみるが、忙しいので遅れやミス、トラブルにつながってしまう
  ↓
もっと忙しくなっていく

このようなサイクルにより、悪化が進行していることが分かりました。

そして、A課長自身忙しい中でも実務を処理し、いくつものトラブルを解決していることで満足感を得てしまっており、課全体の悪さを認識していないことが一番の悪さの原因でした。

多忙は怠惰の隠れ蓑

と、いう言葉もひと時流行りましたが、これもその典型でした。

忙しい忙しいと、目先の事柄にとらわれ、本来やるべきことが行えていない状況は、怠けてやるべきことをやっていないのと結果的には同じ状況に陥ります。

解決の方向性

結局、A課長は「うちの課はベテランが揃っているから」と、個人プレーに対しての危機感を持っていなかったのですが、現場の担当者たちは、「困っているけれども助けてくれる人がいない」状態で、助けを求めて手を伸ばしているのですが、誰も手を掴んであげられる人が周りにおらず、孤立した状況でした。

そこで、3つのことに取り組むように指示をして、それを対策としました。

①ベテランと若手がペアを組むこと

このペア制では、自分の仕事の主担当はそのまま継続しますが、ペア相手の仕事に対して副担当も行うこととします。

主担当は副担当をメール配信の宛先に追加、そして関係者からの連絡もメインは主担当に入れて頂くのですが、メールであればCcに副担当を入れてもらうように広く周知していきます。

顧客との会議と社内の会議が重なってしまったときなどには、これまではどちらかを欠席したり延期するなどの対応をしていたところを、副担当が片方に参加することで、時間的な余裕を作ることなどが副担当の主な仕事となります。

サポートをしてもらうためには必要な情報の共有がありますが、お互いに副担当のときにどういう情報が欲しいかを経験することで、きちんと相応の情報を共有することの必要性を身をもって経験として持っていきます。

②標準化すること

これまでは、相談できないことから隣同士に座っているにも関わらず、帳票の書き方や使う資料のフォーマットなどがオリジナリティに富んでいました。

ガラパゴス化ともいうのでしょうか、お互いがバラバラの仕事の仕方ではサポートの難易度は格段に上がりますから、帳票の書き方などのルールのたたき台を私が作り、徐々に自分たちで使いながら共通のやり方やフォームを作り上げてもらいました。

与えられたものより、自分たちで作ったルールであるほど守る意識も強まりますし、自分たちで改善したという自信にもつながりますから、必ず活動の最後の美味しいところは全て担当者たちに与えます

これが、長期的にこの組織が自分たちで改善を繰り返し、より良い組織を維持していくことにつながります。

③課長には担当業務をさせない!

ここが一番苦しいところです。

禁煙やダイエットと一緒で、プレイヤー課長から担当業務を取り上げると、禁断症状にも似たとても苦しい状況に陥ります。

今の自分の高評価につながる実績を封印し、新たなステージで戦うこと、また実務が大好きなのにやれないことというのはとても辛いものがあります。

また、トラブル解決も自分でやればすぐに終わるのにと、もどかしくもあり、苦しい状況が数ヶ月続きます。

今回、A課長は異動していなくなってしまいましたので、後を継ぐBさんには担当業務を持たせないようにして、この苦しい状況に耐えてもらいました。

そして、部長さんにもその間は、あまり批判を言わないように釘を刺し、実務をせずにまだまだ未熟な管理で勝負している状況を少しでも褒めるようにお願いをしました。

監督者になり、役職が上がるにつれて求められるものが高度となると、相談する相手も減り、孤独との戦いも始まります。

特に課長は、これまでの担当者とは大きくステージが変わるポイントですから、そこは部長さんたち上層がサポートをしてあげることがとても大切になってきます。

課長に必要なマネジメント

部下に対するマネジメント

課長は課のメンバーの取りまとめ役です。

一人で難局を乗り切るのはとても辛く、苦しいことであることを理解し、チーム内でサポートし合える状況を作り出すこと、そして自分がメンバーを導いてあげる意識が大切です。

そのためにも、マネジメントとして一番重要なのが、上とも下ともコミュニケーションをしっかりと取り、適切な対応がとれるような状況を作り出すことが必要ですし、あまりにも自分が忙しい状況で、みんなの業務環境を整えてあげられないようではいけません

課長に対するマネジメント

そして、課長はこれまでのプレーヤ-からマネージャーへとステージを変化させていく大切な時期であり、とても苦しい時期になります。

そして、課長も同様に一人で難局を乗り切るのはとても辛く、苦しいものになります。

立場上、一緒に並走してくれるサポーターもいなくなる中ですから、ここで部長ら上層の方々が、きちんと課長の活動にも目を向け、サポートしてあげることも部として、会社として組織全体を良い方向に導くためにはとても重要になってきます。

まとめ

どのポジションでも一人で戦うことはとても大変です。

会社という組織であるメリットを活かし、チームとして支え合って活動をできるように環境を作ること、そしてそれをコントロールすることがマネジメント層には必要です。

そのためにもチーム内のコミュニケーション向上を図り、よりチームメンバーが働きやすい、良い環境を作っていくことが組織の管理を成功させる近道になります

そして、個人商店化はミスやトラブル発生時の対処が難しく、特にインフルエンザや家族の病気などでも自分がやるしかないという環境となるため、休みも取れず潰れてしまうことにもなりかねません。

自分が休んでも誰かが助けてくれるという安心感は、従業員満足度の向上につながり、精神的な余裕につながります。

すると、電話応対が柔らかくなり、顧客とのトラブルが回避できたり、視野が広くなり間違いを見付けやすくなるなど業務品質も各段に高くなります。

これが課長が行うべきマネジメントであり、成果を最大化する秘訣になります。