代表取締役社長は会社のトップ?

業務改善
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主任さん
主任さん

会社の一番偉い人って社長ですよね?

所長
所長

間違っているわけではないのですが、実は若干複雑。

そうである場合と、そうでない場合があります。

主任さんの株式会社の機関に対するイメージと実際のギャップを図に表すと…

こんな感じ。

図の左側(緑色)のイメージのように、社長がトップでその下に専務や常務、平取締役などと呼ばれる取締役がいて、管理職である部長や課長。

ここまでを会社側とし、その下の係長や担当者などの組合員がいるというような分け方をしている人は私以外にも多いのではないでしょうか?

実際には、図の右側(青色・オレンジ・黄色)にあるような形をしています。

特に分かりにくいポイントを図に①、②、③で示しましたので、この部分について整理していきます。

①代表取締役社長は取締役から選任

ここは一番勘違いをしている人が多いように思うのですが、取締役会設置会社では取締役会の決議の中で代表取締役社長を取締役の中から選任します。

文字通り、取締役の代表者として選ばれるのが代表取締役です。

取締役会とは?

まず先に取締役会とは何かについて簡単に整理しますが、株式会社の業務執行における意思決定機関という位置付けで、株主総会で任命を受けた3名以上の取締役によって構成される機関となります。

上場会社には取締役会の設置が義務付けられていますので、取締役会の設置されている会社は大きな会社をイメージすると分かりやすいかと思います。

取締役会がある株式会社

取締役会がある場合には、取締役は取締役会の構成員という位置付けになりますので、全員で取締役会を運営し、会社の意思を決定したり、取締役同士でお互いの監督を行います。

そして、代表取締役は対外的に会社を代表して業務を執行する機関であり、取締役会の下部機関としての位置付けとして取締役会の指揮や管理を行います。

ですので、取締役の代表ということで、図のイメージのように会社でのトップという位置付けをイメージするのですが、実際には、取締役の中にあるひとつの役割ということになります。

そして、取締役会の下部機関ですから、当然上位に位置する取締役会の決議で選出だけでなく、代表取締役の解職を決定することもできてしまいます

解職された代表取締役は取締役に戻るのですが、取締役の解任は取締役会では行えません

能力が足りなかったから、不祥事をおこしたから、株価連動型報酬を得る際に社内ルールに反した手続きによって、本来得られる額より多い役員報酬を得ていたことが社内調査で明白になり、社内外からの反発が高まったからなどという理由で、代表取締役社長の解職をしても、取締役として会社に留まっているのはこういった背景があります。

取締役会では取締役を解任させる権限は持っていないのです。

仕事が出来ず、従業員からの評判も著しく悪いのに、なかなか取締役の解任がされない、部長たちの降格はされるのにということはないでしょうか?

これは、会社内においての意思決定機関が取締役会ですから、そこのメンバーにある取締役同士での解任が出来ないことが理由になります。

取締役会がない株式会社

2006年に施行された会社法では、取締役会を設置しなくてもよくなりました

これにより、取締役会がない会社とした場合には、代表取締役の設置は任意となります。

そして、取締役会がない場合には、取締役は原則代表取締役となり、会社を代表して業務を行うことになります。

取締役会という集まりで業務執行する内容を判断せず、取締役自身で判断ができる環境にあるわけですから、その取締役が会社の代表権を有するということです。

②取締役は株主総会で選任

取締役の役割

取締役は株主総会で選任されますが、先ほど書いたように取締役会の有無によって取締役の業務内容なども変わってきます

取締役会がある場合には、取締役会の運営を行い会社の意思決定をする機関の構成員で、取締役会の無い場合には、代表取締役として意思決定をすることになります。

取締役にも任期がある

そして、取締役の任期にも定めがあります。

任期は原則として2年で例外が2つ設けられています。

株式非公開の会社は、定款の定めにより最長10年まで伸長が可能
剰余金の配当などを取締役会で決定できる会社は定款の定めにより1年とする

取締役の選任の場

取締役の選任は、株主総会の普通決議で行われます。

普通決議とは議決権の過半数を有数株主が出席し、出席株主の議決権の過半数の賛成により議決します。

例えば、どのような決議が行われるか、一部抜粋しますと以下のものがあります。

  • 取締役の選任と解任
  • 会計参与や会計監査人の選任と解任
  • 計算書類の承認
  • 監査役の選任
  • 取締役等の報酬の決定

社内の取締役を解任させるためには株主総会にて解任の判断がされなければならないのですが、日ごろの仕事ぶりを見ることがない株主の方々が判断することになるので、なかなかそういった判断にはつながらないですよね。

取締役同士で相互監督するといっても、面と向かって仕事していないと株主総会で報告するのも気が引けますし、パワーバランスなどもありますから、社長を退いても取締役として裏では人事権を掌握しているなどの状態にもなってしまうのですね。

③監査役による監査

監査役とは?

監査役は、業務執行機関である取締役を監査する機関で、会計監査権限業務監査権限を持ちます。

ですが、定款に監査役の権限は会計監査に限定する旨を定め、登記することで業務監査権限を与えないとすることも可能です。

監査役設置は原則任意ですが、取締役会設置会社と会計監査人設置会社では設置が義務付けられていますので、上場企業には監査役も設置されています。

監査役の役割

監査役は、取締役が不正な行為をしたり、法令や定款に違反する事実が認められた場合に取締役会に報告する義務を持ちます。

また、取締役会に出席して、必要に応じて意見を述べる義務や、取締役が株主総会に提出する書類の調査を行い、違法性や定款違反などの問題があれば、調査内容を株主総会にて報告する義務を持ちます。

会計監査人とは?

会計監査人は、株式会社の計算書類(P/L、B/Sなど)を監査し、会計監査報告を作成する会社の機関です。

設置はこちらも原則任意ですが、大会社監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社会計監査人の設置が義務付けられています

そして、会計監査人になるには公認会計士または、監査法人であることが定められています。

あまりなじみがない監査役ですが、きちんと会社が運営されているかをチェックする機関であり、株主ー取締役ー監査役の三者が株式会社には関係し、安全な会社経営が行われるように組織されています。

まとめ

全ての機関についてまとめると、話が難しくなっていくため省いたものもありますが、株式会社には株主総会取締役という最低限必要な機関があり、会社規模や株式の公開状況などによりその他の取締役会や監査役、監査役会、会計監査人や会計参与といった機関の設置が変わります。

条件としては

  1. 全ての株式会社には、株主総会取締役の設置が義務付けられている
  2. 株式の公開会社は、取締役会の設置が義務付けられている
  3. 大会社には、会計監査人の設置が義務付けられている
  4. 取締役会設置会社には、監査役または監査等委員会指名委員会等のいずれかを設置することが義務付けられている
  5. 4.のうち、非公開会社で会計参与設置会社には、監査役等の機関の設置は不要となる
  6. 指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社には、取締役会会計監査人を設置することが義務付けられている

一覧にまとめると

このように色々なパターンがあって、とても難しい株式会社の機関ですが、普段会社内で見ている組織と法令で定められている機関では雰囲気が変わりますね。

そのため、社長が会社の株の多くを保有している場合には、社長であり株主でもあるわけなので、一番偉いということは間違いではありません。ですが、株を少数しか保有していないようであれば、このように一番偉いとは言えないのですね。

このような視点で自社の様子を見てみても面白いかと思います。