新事業のアイデアを評価しよう!

経営支援
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経営者さん
経営者さん

コロナの影響もあって、今の事業が低迷してきたから
新事業をやろうと思うんだけどね…

所長
所長

「事業再構築補助金」などもありますし、そういった会社も増えてますね。
どのような事業がしたいとか構想はありますか?

経営者さん
経営者さん

アイデアはいっぱいあるんですよ!
やりたいこともいっぱいあるし!
でも、どれが良いのか悩んでしまってる感じですかね。

所長
所長

全部はリソース的にも無理がありますしね。
そのアイデアを評価して、その中から成功しそうなものに
絞り込んでみると良いですよ。

今回は、支援先のお店にいらっしゃっていた経営者さんとの会話を参考に記事にしてみました。
これまでと大きく変わる社会情勢を受けて新しい事業を始めようとするなど、バイタリティ溢れる経営者の方たちと話をしていると、「あれもやってみたい!」「これもいいアイデアじゃないか?」といった具合に、新事業のアイデアが豊富に浮かんでくる方が多いように感じます。ですが、やってみたけどうまくいかなかったというケースも多々聞きます。

大きなダメージを受けない失敗であれば、良い経験したと思えることもあるでしょうが、しっかりと事前に検討できておらず失敗した場合には勿体ないですよね。そこで今回は、どのような事業を選ぶと成功する確率が高いかを分析する方法、手順について整理をしていきます。

現状分析の実施

まずは、自社の置かれている状況を把握することが大切です。「敵を知り、己を知れば百選危うからず」ですね。と、いうことで、自社の置かれている状況について、外部環境と内部環境の分析から始めましょう。

分析の仕方は、インターネットなどで調べて見ると、SWOT分析や3C分析、PEST分析、4P分析などなど、いろいろな方法があって何から始めたら良いんだろう?ってなっちゃいますよね。その中で、私のおすすめは、SWOT分析です

SWOT分析は、50年ほど前に提唱されたものであることから時代遅れという意見も聞きますが、自社の状況を内部と外部に大きく整理することができます。特に自社の強みを評価できる点は新事業の評価にあたってとても重要になります。

まずは、SWOT分析を行うところから始め、それぞれの項目について細かく掘り下げていく際には、必要に応じてそのほかの手法を織り交ぜながら評価していくと良いですよ。

戦略の立案

今回の相談では、すでにいくつか新事業のアイデアを持っている状態でしたが、新事業のアイデアを作っていく際にもSWOT分析は有効です。SWOT分析のあとにクロスSWOT分析を行うことで、アイデアを具体化することができます。

「強みを活かして機会を捉える」、「弱みを克服して機会を捉える」といったように整理をしながら、どういった戦略、方向性で新事業を決めていくと良いかのイメージを少しずつ形にしていくのがクロスSWOT分析です。

「自社の強みを活かしたら、どんな外部環境の機会が捉えられるか?」、「良い市場ニーズがあるけれども自社のリソースでは少し足りない。こんなシステムを導入すれば実現性ができるかな?」といったように内部環境と外部環境を行ったり来たりしながら、新事業の構想を作っていくことができます。

新事業アイデアの戦略整理

次に新事業の構想部分の整理をしていきます。

新事業のアイデアを4種類に分類していきます。指標は、「市場」と「製品・サービス」の2種類です。これらが、今行っている事業と被るのか被らないのか、言い換えると新規性があるのかないのかです。図にするとこのような形になります。

こちらの図は、「アンゾフの成長マトリクス」と呼ばれるものです。こちらのマトリクスにより、リスクの大きさや取るべき戦略を整理することができます。

新事業は、「市場浸透戦略」「新製品開発戦略」「新市場開拓戦略」「多角化戦略」のいずれかに分類できます。それぞれリスク・リワードに差があり、図の緑が濃い戦略ほど高リスクと言われています。中リスクの戦略を取るのか、高リスクの戦略を取るのかは、自社の余力、体力を見ながら決めていくと良いでしょう。

各戦略は以下のように分類されます。
市場の考え方は、様々なサイトでも意見が分かれていますので難しく感じてしまうかもしれません。あまり深く考えず、自社では既存の市場はこのような感じ、そこから外れる市場は新市場としてしまえば大丈夫です。

市場浸透戦略

既存市場に既存製品・既存サービスを投入して、売上拡大やシェア拡大を狙う戦略です。

既に顧客がいる市場に既にある製品・サービスを提供しますので、もっとも低リスクな戦略になります。 広告・宣伝などを通じて周知を促すほかにも、新しい使用方法などを提案することで販売量の拡大を狙うといった戦略が取られます。

例えば、ストレートやロックで飲まれていたウイスキーの新しい飲み方としてハイボールを提案したり、単品販売していた数種類の味の違うお菓子をアソートとしてセット販売したりする戦略があります。

新製品開発戦略

こちらは、既存市場に新製品・新サービスを投入して売上拡大を狙う戦略です。

新しい製品・サービスの開発が必要ですので、中リスクな戦略となります。

新製品・新サービスをすでに販売している競合がいる場合には、その競合との差別化をどのように図るかが重要になります。また、競合がいない場合には、そもそも市場にその新製品・新サービスを求めるニーズが存在するのか確認することが重要です。

例えば、新しい味のドリンクを販売したり、店内飲食だけでなくテイクアウト商品を開発したりする戦略があります。

新市場開拓戦略

こちらは、新市場に既存製品・既存サービスを投入して売上拡大を狙う戦略です。

すでにある製品・サービスを新しい地域や年齢層などを対象にするため、中リスクな戦略となります。

進出する市場ですでに販売している競合がいる場合には、その競合との差別化をどのように図るかが重要になります。また、その地域での販売力に乏しいと売上が伸びませんので、販売力を強化していくための施策も重要です。

例えば、海外進出や国内での別地域(関東から関西など)への販路拡大したり、20歳台をターゲットにしていた製品・サービスを40歳台向けに提供したりする戦略があります。

多角化戦略

こちらは、新市場に新製品・サービスを投入していく戦略です。

全く新しい事業を始めることになるため、成功すれば、これまでと異なる事業であることからリスク分散が図れる大きな事業の柱が構築できますが、新しいことを始めるため失敗するリスクも高く、ハイリスク・ハイリターンな戦略です。

多角化の中でもいくつか分類があり、自社のリソースや経験、ノウハウといったものが利用できない事業ほど、失敗するリスクが大きいと言われます。

選んだ事業の詳細分析

戦略の分類で選んだ事業は、詳細分析を行うことで、どの程度の成功につながるかを見ていきます。最初からすべての事業アイデアの詳細分析ができれば申し分ないですが、時間も費用もかかることになりますから、ある程度絞った段階で行うことが良いでしょう。

市場環境は、思いのほか早いスピードで変化します。昨年流行ったものが今年にはすでに下火になっていたりする様子は感じることも多いかと思います。そういった状況でスピード感のない新事業への取り組みでは、売上機会の喪失となります。アイデアはすぐに評価して実現性をチェックできると良いですね。

経営者さん
経営者さん

いや、分かるけど忙しくてなかなかそこまでは…

そもそもどれくらい時間がかかるものなの?

所長
所長

企業や事業、経験の有無などによりけりですけど、

自分で事業計画書作成するには100時間ほどかかると、言われますね。
大変な場合には、中小企業診断士に相談してみてはどうでしょう?
経営分析のプロですから、これらの分析も得意な方が多いですよ。

と、中小企業診断士の宣伝もしてみたところで、本線に戻って新事業の分析の流れについて整理をしていきますね。

市場分析

新事業を行う市場にニーズがあるのか、どの程度の規模で存在するのかを調査します。これは、先に行ったSWOT分析の機会に当たる部分の深堀です。新事業のアイデアに対するニーズがそもそも存在しなければ売れないですし、規模が小さければ望むような売上拡大も達成できませんからね。

分析にあたっては、ターゲット顧客層の規模や今後の推移、すでに競合がいるのであれば、競合のシェアや市場の評価、などを参考にしながら考察していきます。

実行計画

新事業を開始するまでの準備計画を立てます。

この時点での計画はざっくりしたもので良いですが、おおよそどの程度の準備期間を要するか、またその費用やリソースの投入がどの程度必要となるかなどをみます

現状の経営状態から、すぐに事業化する必要があるのであれば短期の事業を、体力に余裕があるのであれば、比較的長い準備期間を要するものでも選択できると思います。

投資効果分析

続いて、新事業を行うための投資効果を見ていきます。

設備投資や開発費などが必要な場合は、見積を取得するなどして投資金額を算出します。また、その市場で見込める売上高を販売単価や販売数から算出するとともに、原価や販管費なども資産し、予想利益を出します。

投資金額が何年で回収できるかを評価して、投資効率を見極めます。投資金額が大きい割に得られる利益が小さければ、とてもリスクの高い事業であるため、避けることも必要になってきます。

また、既存事業と新規事業の関連性が強いことで得られる効果をシナジー効果と呼びます。このシナジー効果の高い事業であることは、新規事業と既存事業の関連性が強くなることで、既存事業の収益拡大も狙えることから、大きな成功要因となります。新事業の投資効果については、既存事業に与える影響も合わせて確認するよう意識しましょう。

最終判断

  • 自社の置かれている状況の分析
  • 新事業アイデアの整理と順位付け
  • 新事業の詳細分析

この大きく三段階を経て、最も自社に合った新事業を選びます。

新規事業アイデアの中には、昔からやりたかった事業や一発逆転できそうな事業など、夢のあふれる事業があります。しかし、一番大事なのは自社の強みが活かせる事業を選ぶことです

ハイリスク・ハイリターンの事業は夢もありますが、自社の強みが活かせる事業は既存事業の売上拡大にもつながるローリスクの事業であることが多いです。事業立て直しのための新事業であれば、ローリスクの事業を、十分な資金があり更に拡大を狙うのであればチャレンジ事業を狙っていく。自社分析を通じて、適切な時期に適切な戦略の事業を行うことが、長く企業を存続させ、安定した経営につながります。

事業再構築補助金などでも事業計画書を提出しますが、実現性の低い新事業は計画の甘さ、分析の甘さが目立ち、不採択となりやすい傾向にあります。しっかりとした事業計画を立て、実現性の高い事業を選択し、進められると良いですね。